(2「友情・努力・勝利」との関連

  『少年ジャンプ』が創刊された1968年当初には、その当時からの編集方針であったという「友情」「努力」「勝利」の3つの要素はあまり強調されていない。この時代の主人公たちの闘う相手が社会や権威であり、具体的な姿・形をした敵ではないためであろうか。主人公と仲間たちの間に存在する親分・子分の上下関係は、それ以降の時代に見られる「友情」とはやや異質なものである。また、社会や権威に反抗しても、試合やゲームのようにはっきりとした勝敗がつくわけではない。それゆえ彼らの闘いの帰結は、70年代以降に見られるような、試合で勝者と敗者の区別がはっきりとつく「勝利」とは別物と考えられる。

 70
年代以降になると、「友情」で「勝利」するというパターンが確立し、徐々にその傾向が色濃くなっていく。「努力」が強調されていたのは、70年代半ばの『プレイボール』のみであり、残る11作品にはほとんどみられなかった。しかし、少年マンガから熱血や根性といった要素が失われたかといえば、必ずしもそうではない。熱血は70年代以降、「努力」ではなく「友情」に形を変え、受け継がれていったものと思われる。

 80
年代から90年代半ばまでの作品の主人公たちは、物語内でゼロの状態から確実に成長していくが、その成長とは試合やバトルの際に必要な能力のレベルアップに限定されており、内面の変化や成長はほとんど見られない。80年代半ばから続く、バブル景気とメディアミックスという社会全体の動きと呼応するかのように、マンガの世界の主人公はゲームのようにレベルアップしていった。そこでは、一生懸命に「努力」すること、真面目さなどは一切排除されており、軽々と試練を飛び越え「勝利」する様が描かれている。

そして、バブル崩壊で不況が深刻化した90年代後半になると、「勝利」には重点はおかれず、「友情」が最も大切なコンセプトとなっている。必ずしも明るくない時代だからこそ、悲観するのではなく強い信念を持ち、笑って生きようではないかと訴える『ONE PIECEにみられるように、もはや「努力」も「勝利」も説得力をもたなくなっているのかもしれない。いずれにせよ、「友情」のために必死にたたかう主人公の姿は、いつの時代においても共通しており、仲間が大切なものとされていることは確かなようである。

 

表4-2 各作品における「友情」「努力」「勝利」の重要度 

事例

作品名

友情

努力

勝利

ハレンチ学園

男一匹ガキ大将

プレイボール

リングにかけろ

−→◎

○→×

キン肉マン

×

キャプテン翼

×

北斗の拳

×

ドラゴンボール

×

電影少女

×

10

幽☆遊☆白書

×

◎→○

11

SLAM DUNK

×

12

ONE PIECE

×


 表-は、各作品において「友情・努力・勝利」が強調される度合いについてまとめたものである。最も重要視されているものから順に、◎、○、△、×とした。なお、物語中盤より作品内容が変容しているものは「→」、作品内容とそれらの要素に関連がみられないものは「−」で表記している。

       

                                                            

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